はじめに
教師という仕事は、子どもと向き合う日々の中に、時に予想もつかないドラマが生まれます。今回は、私が小学校高学年の担任をしていた頃の、ちょっとした“作戦”と、それにまつわる心温まる出来事をご紹介します。
テーマはズバリ——「モテないキャラ大作戦」!
これは、彼女(現在の妻)がいることをどうしても子どもたちにバレたくなかった私が、あの手この手で仕組んだ“2年間の演技”に関する裏話です。
「絶対にバレてはいけない」理由
当時私は、小学校の5年生の担任として着任しました。生活圏内には彼女と私の共通の行動範囲が多く、週末に出かけていると、児童や保護者とバッタリ出くわすリスクも。
「先生、デートしてたでしょ?」
そんなふうに言われるのが何よりも防ぎたかった私は、ある決意をしました。
——“モテないキャラ”を徹底的に演じきろう。
作戦開始:片思いの相手は「〇村〇純さん」
まず私は、教室内で「大の〇村〇純ファン」という設定を作り上げました。作文の宿題には、「先生が〇村〇純さんと結婚する方法」「バレンタインに〇村さんからチョコをもらう方法」など、ユニークすぎるお題を出題。
さらに、授業中の例題にもその名前を連発。たとえば算数ではこんな問題が登場しました。
「先生が家を出てから〇村さんが分速200mで追いかけてきました。7分後に追いついたときの、先生の速度は?」
もはや、恋愛に本気な(ふりをした)先生は、学校でもちょっとした“ネタキャラ”に。
女子からの散々な扱いも「計算通り」
そんな私の奇行(?)に、女子たちは冷ややかでした。
「先生、細すぎ!」
「だから彼女できないんだよ~」
「めんどくさっ!」
しかし、私の内心はニヤニヤ。「よし、完全に騙せている…!」
そして作戦は、思わぬ成果を上げ始めました。
目撃されても「スルー」される日々
実は、彼女とのデート中に何度か児童と遭遇する場面がありました。しかし…
「え? あれ先生じゃない?」
「…いや、彼女なんているわけないか〜笑」
先入観ってすごいですよね。バレるどころか、「まさか」の気持ちが強すぎてスルーされる現象が起きたのです。
学校で、先生が女の人と歩いていたという話になっても「まさか彼女!?」なんて考える子は0。
そして、卒業式前日——サプライズ発表!
2年間、5年生→6年生と持ち上がり担任を続けていたある日。ついに、私は人生の一大イベントを迎えました。
そう、結婚です。
そして、その報告をする場面として選んだのが…6年生の卒業式の前日、学年集会。
「先生、実は結婚します。」
会場は騒然。「えええええええ!!!」という歓声とともに、口をあんぐり開ける子どもたち。あの瞬間のリアクションは、一生忘れられない思い出となりました。
結婚式には、制服姿の元生徒たちが
嬉しかったのはその後。結婚式には、教え子たちがわざわざ中学校の制服姿で駆けつけてくれました。みんな笑顔で「先生おめでとう」と言ってくれたこと。あの時の“作戦”が、ただの茶番ではなく、子どもたちとの信頼関係の上に成り立っていたのだと実感しました。
おわりに
教師という仕事は、時に「演じる」ことも求められます。でも、その演技の向こう側には、子どもたちに寄り添いたいという強い思いがあるのです。
今回ご紹介した2年間の裏話も、ちょっと笑えるけれど、子どもたちと過ごした日々の中では大切な“絆のエピソード”のひとつです。
教師の仕事って、本当に大変。でも、こういう人生の共有ができることこそ、教育の醍醐味なのかもしれません。
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